1956年のカンヌ映画祭で審査員特別賞をとった「ミステリアス・ピカソ/天才の秘密」は、ピカソが延々と絵を描く姿を克明にとらえたドキュメンタリー作品ですが、劇中では驚異的なスピードと発想により、魚や牛、人間をユーモラスに変化させながら、見事な描写を施しています。

1940年、パリはヒトラーの手の中に落ちますが、ピカソは愛人マリー・テレーズやドラ・マールの肖像画を多数描いており、「キュビズム」から派生した応用絵画を熱心に探求していました。そして名画「髪をすく女」や「泣く女」が生まれ、より一層の制作意欲に満ちていきました。

1936年の4月にスペインで内戦が勃発し、ゲルニカが爆撃された翌月、ピカソは代表作「ゲルニカ」の製作に取り掛かります。この絵画の最大の特徴としてモノクロで描かれているので、画面全体が引き締められて、一つ一つのパーツが、相互リンクして、印象を強めているのです。

独自のカラーを打ち出した「キュビズム」以降に出会った最初の女性、オルガ・コクローヴァは悪い言い方をすれば、ピカソの絵画の道具として、ピカソの頭の中で構築されてしまった感は否めませんが、模倣的な人物画の取り組みに余念が無く、女性との出会いは製作意欲の原点でした。