1930年代の安定的な色彩芸術に次元一つ分の企てをプラスすることによって、導き出された新手法、「ジャクリーヌの肖像画」から香る素直な愛の形体は普遍的であり、安心感と緩やかなリズムの調和から老人ピカソの行き着いた先が真の幸せであったことに間違いはありません。

ピカソはパリに拠点を移して以来、様々な出会いをそのまま絵画にしていましたが、マリー・テレーズやオルガ・コクローヴァなどの身近な女性の肖像画も平行して描きました。晩年は最後の妻ジャクリーヌとの幸せな生活を芸術の糧として、自己の人物描写を完全ものとしました。

「泣く女」はある種、写実性を帯びた異次元の女と言うこともできます。そして対極的な絵画はこの世に一つしかありません。レオナルド・ダヴィンチの「モナリザ」です。ピカソは死後、より一層人気が高まり、晩年悪い評価を下していたマスコミもこぞって、賛美し始めました。

21世紀の最先端芸術は、確かに多ジャンル化して、その発展が止まないので、国内各地で行われるビエンナーレでは、異常な盛り上がりを見せています。しかし目を閉じればそこには、必ずピカソの面影が存在しており、未だにピカソの志向が根強く生きていると言えます。